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キャロルの日記 / ピアノスタジオ・ジャコメッティ

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15年のNY暮らしの後、結婚を機に東京へ。そしてピアノスタジオ・ジャコメッティを開設。そんなキャロルの普段の生活をリポートします。

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岡本美智子先生を囲む会

こんにちは、キャロルです。

昨日は、桐朋時代のキャロルの恩師である岡本美智子先生を囲む会がありました。

先生は来年で古希(70歳)を迎えるというのですが、まあ昔と変わらず、頭の回転は速いし、ほんとうにばりばりの現役でいらっしゃいます。
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昨日は、先生の一期生の方から、まだ現役の学生さんまで、年齢も上は60代から下は20代まで、総勢70~80名近く集まりました。

場所はムジカーザ。小振りだけれど素敵なスタインウェイのピアノがあり、前半はミニコンサート形式、そして後半はフレンチ・スウィーツと共に歓談、という形でした。
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実は、岡本先生プロデュースの門下の会は、4年程前から毎年この時期に開催されているそうです。

昨年まで海外暮らしでしたので、私は、今回が始めての参加となりました。

私達の結婚式の日には大きな公開レッスンのお仕事と重なってしまいいらっしゃれなかった先生とも、門下の仲間達とも、実に16年振りの再会となりました!

左端が同級生の谷有希子さん、右端がひとつ後輩の野上愛矢さんです。
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それにしても、改めてびっくりしたのが、岡本門下生達のレベルの高さですね。

どの学年も、皆さん極めて真面目で、熱心で、そして先生に懸命についていくぞ、という意気込みの様なものが感じられるのです。それは、卒業してから何年経っても、変わらないのかもしれません。

『若いうちは、何かひとつのことをただがむしゃらにやり続ける』、そんな時期があって良いのではないか、
と昨日のスピーチで先輩のどなたかがおっしゃっておりましたが、そんな『ピアノ漬け』の毎日があったからこそ、こうやって皆と再会が喜べるのではないでしょうか。

私も、突然先生から『石関さんからも何かスピーチを』と指名されて、何の準備もなく話をさせて頂いたのですが、その中でこんなことをお話しました。
『私自身も、NYでほんとうにたくさんの物を得てきましたが、でも何よりも岡本先生の教えというのが、世界で通用するのだ、ということを、実際に外に出てみてから実感したのです。なので先生には感謝です』とね。
これは本当のことです。

アメリカに行った当初は英語で大分苦労しましたが、実はピアノで苦労したことはありませんでした。(腱鞘炎になった、とかそういう外部的なことではなく、ピアノの技術力、表現力等について)

逆に、言葉でハンディがあった分、ピアノの演奏に寄って、『私自身というものがきちんと評価される判断材料』となってくれたのです。

やはり、音楽は世界共通言語である、ということを実を持って体験できた事はたいへん幸せであったと思います。

ただ、昔は、古い教えの先生にレッスンを受けてきた人々は、海外に行って一から基礎から直させられたり、いろいろと辛い思いもしたことを本で読みました。
その点、岡本美智子先生は、実際にご自分がアメリカに留学されていて、
あの名ピアニスト『リリー・クラウス女史』の教えを身体で飲み込み、
そしてご自身はあのアメリカ最難関のコンクールと言われる
『ヴァン・クライバーン国際音楽コンクール』で見事入賞もされているのです。

そんな先生に15歳の時から大学卒業まで、みっちりと基礎を仕込まれたことは、私にとってほんとうに幸せなことだったな、と思います。

先生の教えに付いて行けない生徒は、破門させられそうな雰囲気が漂っていましたので、岡本門下生は皆さん必死だったのだと思います。

まあ、そんな先生も、『わたしも先が長い訳ではないし』なんて言って、これまで『先生の教授就任』だとか『50歳のお祝い』、『還暦』などで集まっていた門下の会を、毎年するようになったそうです。

来年は先生の『古希』のお祝い。

『来年は先生が演奏されるのですか?』と伺ってみたのですが、『いや、私は弾かないのよ。今、親指が痛くてね』なんて言っていました。
でもね、
どの方のレッスンの思い出で出てくるのは、『先生はどんな曲でもいとも容易く弾けてしまう』ということなんです。
どんな難曲をひーひー言って持って言っても、『あら、なんでこんなの弾けないの?』と言って、隣のピアノでものの見事に『さらさらさらーと』弾いてしまうのです。

『なんでこんなの弾けないの?』と言われると、一生懸命練習してきたのはナンだったのか、と思いますよね。
そうなんです、先生は基本レベルが高い方でした。
私達がこんなの弾けない、といってひーひー言っているレベルでモガイテいないのです。

そして、弾ける人の隣にいると、自分も弾けるようになってくるのですから、あら不思議。

面白いですよね。

+++

NYでキャロルが教わったキャニン先生は、それとは全く異なったアプローチをなさる方でした。

生徒弾けないところは、なぜ弾けないのかをきちんと分析して、そしてそれを解決する方法を教えてくれるのです。『ここはこの指使いに変えたらどうだろうか』とか。

すると、あら不思議、弾けるようになるではないですか。
そして、きちんと頭で理解して弾けるようになっているので、本番の時にもきちんとコントロールが利く様になるのです。

それがどんな状態なのか、という例を挙げます。
今年の3月にNYでオーケストラと共演した時の事ですが、
その時の演奏中には、『弾いている自分』と、『それを上空から見ている自分』のふたつの状態が同時にあったのです。
要するに、オーケストラと共に音楽を創り上げていく自分と、その自分を上空から冷静に見つめる自分とが存在していたのです。

そういう状況になると、自分を完全にコントロールできている状態になり、
会場に観に来てくださっていたキャニン教授からも、
『これまでで最高の出来栄えだったね、ブラボー!』
というお言葉を頂く事ができました。

その時は、ああ、これで私もようやく先生の教えが身に付いたのだな、と心から嬉しかったです。

+++

まあ、なんだか長くなってしまいましたが、恩師の事を書き始めるとどうも筆が止まらないですね。(笑)


また、機会がありましたら、綴っていきたいと思います。



それではまた。


キャロル
by karol1 | 2013-10-01 00:24 | 人物編

by キャロル